~新社会人に読んでほしい幻想文学たち~
新社会人の皆さん、5月病ですか?
そろそろ退職届をだして、ピースボートでイエイしたいなあと思っているあなた!
まあまあちょっと落ち着いて幻想文学でも読んで、この世の事なんて全て幻だと諦めて始業前に会社行ってやる気アピールしなさいな。なせばなる、なさねばならぬほにゃららら。
ということで新社会人に読んでほしい、これを読めば明日から上司の受けがメッチャ良くなる本をご紹介います。
①冥土 内田百間
いやー、秋葉好きの上司いるじゃないですか、たぶん。で、まーメイドカフェ行ってるヤツもいると思うんですよ。そこで「や、自分も好きなんですよ冥土、えカフェ?、え?」といった感じでアンジャッシュ的からみができる一品。
短編集で4~10ページで終わるもの電車で読みやすいですね(正論
や、とにかく幻想小説は速度なんですよ! 大体、物語として破綻しているんだからバツッ終わらなきゃだめですよ。バッとね。そう意味では冥土は全部速いですから、幻想文学の王道ですね。
あと百間先生文章もかっこいい。いいですか、引用しますよ。いいですか。
高い、大きな、暗い土手が、何処から何処へ行くのか解らない、静かに、冷たく、夜の中を走っている。
フーッ、どうですよ。やばいでしょ。まず、句読点の区切り! このカッティングの良さ!ギターでたとえると向井秀徳! そして土手が夜を走るという表現!これ、開始一ページ目のしょっぱなから書いてありますから、まずここでやられてください。
まあ、話としては土手沿いの店に入るとなんだか客が影みたいではっきりしない、はっきりしないんだけど話している内容で、アレ死んだお父さんじゃない!?って気づいて声をかけるんだけど影はもういないみたいな、そういうちょっとセンチな話なんですよ。まあ、とりあえず読んでみてください。岩波文庫なのに表紙全部が絵ですから、岩波も相当押してますよ、コレ。
②ムントゥリャサ通りで
- 作者: ミルチャエリアーデ,Mircea Eliade,直野敦
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 2003/10/01
- メディア: 単行本
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宗教ハマッてる先輩、いるじゃないですすか。やっぱ難しいですよ、無宗教の人間がそういう人と話し合わせるの。でもエリアーデ、この人知っておくとそういう人とも上手くやっていけます、これまじ。ルーマニアのえらーい宗教学者さんなんですね、エリアーデ。そっちの本では「聖と俗」「シャーマニズム」なんて本があるみたいです。よくしらんけど。
で。
ムントゥリャサ通りで。絶対一回では覚えられないこの題名のこの本。
もしかしたら新社会人のあなた。新しい環境になったし、ひとつ「百年の孤独」でも読んでみるか。。。とか思ってませんか?甘い!無理!だってアレ長いから!あと同じような名前いっぱいでてくるから無理!
それに比べるとこっちは162pしかない!あと話しの構造はあっちと一緒ですよ(乱暴)社会主義っぽい世界の中に、あきらかに空想としか思えないエピソードがどんどん入ってきます。ゲシュタポっぽいやつに元校長が尋問されるわけですよ。話としてはそれだけ。でもね、その元校長が話す話がどんどん横道や過去、空想のような話にそれまくるわけね。あーこれはほら吹き爺さんの話だなあと思うとやられてますよ、エリアーデに。中盤過ぎると、アレ、コレほんとの話をゲシュタポっぽいヤツにわからないように話してる? アレ本当はどっち?みたいな状態になるんですよね。で、最終的にはスパイ映画を見終わったような満足感が残る不思議な幻想小説です。
引用しましょうか?
「すなわち、もしいつか、人の住んでいない、水が溜まった地下室があったならば、どんなものかしりませんがしるしを探せ、そしてそのしるしが揃っていたら、その地下室は魔力にしばられていて、そこからあの世に渡っていけると考えていいものです」
「それは本当の話かね」ドミュトレスクは微笑しながら叫んだ。
はい、いや、読んでいる最中ずっとそれは本当の話か!とこっちが言いたくなる小説です。えーと、新社会人に話を持っていくと、まあ、こう、無理そうな案件振られるときあると思うんですよ、ね、そういうときにドミュトレスクの気持ちになって「それは本当の話かね」といってやりましょう。あれ、君もしかしてエリアーデ読んでる?ってなる可能性は0じゃない・・・
③笙野頼子三冠小説より 二百回忌
えっと、新社会人なんだっけ君は、でも冥土からここまで読むころに時は過ぎ、立派な中堅サラリーマンになっていると思う、おめでとう!
ということで中堅サラリーマンにつき物なのは法事よ、法事。ね。おじーちゃんももおばーちゃんも死んじゃうからね。そうなると法事の心構えも必要なわけよ。ま。これよんでおけば法事については大体わかりますから、ま、一種のハウツー幻想文学です。
あらすじですか? はじめの一行が全てを物語っていますね。はい、これ。
私の父方の家では二百回忌の時、死んだ身内もゆかりの人々も皆蘇ってきて、法事に出る
おっとちょっと待ってくれ、どういうことだと思うでしょ。まあ、幻想文学ですから、そこは、ね。でも、この断言力すごくないですか。「法事にでる」と言い切ってる。らしい、じゃあないんですよ。でるったらでる、この断言パワー。ビジネスの世界でもね、やっぱい初めに断言、結論を言う、これはね。大事ですよ。ちょっとでも曖昧なまま進めてしまうと必ず痛い目にあいます。あなたのような中堅は油断してますからね、これ読んで身を引き締めたほうがいいんじゃないですか(上から
これも短いです。59pしかない。でも色んなことが起こります。もうめちゃくちゃ。でも根本は家族愛の話なのかな...
三冠小説というだけあって、これは三島由紀夫賞とってますね。
以上、新社会人に読んでほしい、五月病対策幻想文学でした~